2013年05月

[連載小説]戦う法務課長 第5話「契約交渉③」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

社内説得   隼は、「予算措置上の枠組みのなかで、無理なことを要求し続けても意味はない。それよりも、政府に売買契約の内容を認知させ、かつ、保証に関する予算措置を組むことを目標付ける内容の書面に署名させることで、万が一の際、例えば、外交ルートで圧力を加える交渉を行う際の材料となることが期待できます」と主張した。 隼は、過去、ロシアの案件で、外交ルートを通じた交渉を行うことで、なんらの義務もなかった政府機関が債務を引き受けるかたちで和解したケースを思い出したのだ。日本政府との経済会議のなか...

[連載小説]戦う法務課長 第4話「契約交渉②」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

好 敵 手    「日本側の主張はわかりました。明日の交渉で、外貨転換および保証の件を片付けましょう。それまで商業上の観点から問題となる点は、すべて解決しておいてください」  Y共和国財務省のエレーナ・イワノバは、交渉担当者からの報告に対して、電話を切った。彼女は、今回の契約交渉においてY共和国財務大臣より全権を委任されている。  今度の契約交渉には、会社の法務部の人間が同席していることから、政府起用の弁護士を同行させることも考えたが、結局やめた。その法務部の人間とやらが資格を有した弁...

[連載小説]戦う法務課長 第3話「契約交渉①」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

機 内    モスクワ空港から国内線に乗り継いでY共和国に向かう。モスクワより極東方向へ戻る約6時間のフライトである。今回の出張準備のおかげで、締切りに間にあわない仕事を何とか出張期間中に処理し、現地よりメールで回答するということで猶予してもらった案件が5件、実務家向け法律雑誌に寄稿する原稿2本を隼は抱えていた。モスクワまでの国際線はともかく、国内線は全体に薄汚れた感じで、しかも、壊れたシートもいくつかある。そんな中での唯一の幸福は、隼のシートが喫煙席であったことだ。早速、空港で買った...

[連載小説]戦う法務課長 第2話「契約内容の検討」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

早 朝    午前6時45分。誰もいないオフィス。隼は、まだ目を通していないメールや、回覧物を処理しようと早めに出社した。昨晩は、英国の機械メーカーとの販売代理店契約、イスラエルのバイオ関係のベンチャー会社との将来の事業展開に関する協定書他5件の契約を検討し、加えて、頓挫している香港不動産プロジェクトについての相談を受ける等、息つく暇もなかった。90通近い未開封のメールのタイトルのみをざっと確認。今日の予定をチェックする。今日こそは、先日、依頼のあったロシア向け掘削機械商売にからんだ契...

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