2013年07月

[連載小説]戦う法務課長 第13話「債権回収編④」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

量と質   ――出張から戻ると、通常のペースに戻るには出張の2倍の時間が必要――。 隼は、かつての上司が呟いていたことを、毎度のことながら実感している。 海外出張から戻った翌日にオフィスに出ると、机の上や椅子のあたりに、書類、メモ、郵便物が散乱している。それを処理して、通常の業務のペースに戻るのには時間がかかる。 今は、ノート型PCを携帯して、宿泊先のホテルからでも会社からのメールを読み込むことができる。出張期間中でも、相手はお構いなしに、メールを送ってくる。 便利になった、効率があが...

[連載小説]戦う法務課長 第12話「債権回収編③」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

八方塞がり   イスタンブールの市街から空港へ向かう車中で、隼はトルコ側の当事者達との交渉内容を反芻していた。三島工商鉄鋼部門の稼ぎ頭である新が、政府系企業を事業主体とする建設プロジェクトに関連して下請のトルコの建設会社に納入した鉄鋼資材の代金支払が滞っている。理由は、建設プロジェクトが政府の一方的な判断により、一時中止となったためだ。隼は新とともに、建設会社のみならず政府系企業にも赴き、プロジェクト停止の措置はあくまでもトルコ側の事情でなされたものであるから、少なくとも納入された鉄鋼...

[連載小説]戦う法務課長 第11話「債権回収編②」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

初出張入国手続を済ませ、用心深く鞄を持ちながら、乾はデュッセルドルフ空港の外に並ぶタクシーを拾った。ミシマ・ドイツのオフィスは、空港から約30分程度の町の中心街にある。アウトバーンをしばらく走り、一般道路に降りて、寂れた住宅街を通り抜けると、大きな公園の脇に出る。ここから、オフィスのあるケーニヒス・アレーまでは約5分。大きな百貨店やホテルも見えてきて、ようやく景色が中心街らしくなってきた。乾は、バウ・ケミカルに対する債権回収の交渉のためにドイツ入りした。隼からは、現地の営業(といっても日本人駐在...

[連載小説]戦う法務課長 第10話「債権回収編①」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

発  生 隼が法務課長を務める三島工商株式会社では、取引先に対する債権が支払期日を一定期間経過しても回収できない場合、あるいは取引先が倒産手続の申立を行った場合、夜逃げ等、事実上廃業したような場合に、営業部は「滞留債権事故報告書」を作成し、関係の職能部署へ報告しなければならない。ただ、取引先が国内にあれば、手形不渡処分、破産、裁判所への倒産手続の申立などにより、「事故」発生は、明確かつ即座に認識できるが、海外の場合、現地に三島工商の駐在員がいて、常時状況をウォッチしている取引先でもなけ...

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