2013年08月

[連載小説]戦う法務課長 第18話「債権回収編⑨」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

佳 境   ミシマ・ヨーロッパの取引先であるスタイン社が、リード銀行の主導で再建計画を策定中である。スタイン社と三島工商本社は、同社の持つ台所用品または生活関連用品の輸入・販売を行う合弁事業を企図していたが、スタイン社が事実上、銀行管理下に入ったことで、交渉が中断している。 ミシマ・ヨーロッパは、スタイン社に対して売掛金があり、その回収が危ぶまれている中で、売掛金の一部カット、残額の繰延弁済、あるいはスタイン社の株式との交換(デッド・エクイティ・スワップ)の返済計画を持ち出してきた。こ...

[連載小説]戦う法務課長 第17話「債権回収編⑧」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

昼 食英国の法律事務所は、クライアントと食事をする場合、レストランを使うことが多かったが、往復の時間が無駄であることから、各事務所がもともと持っているパートナー用のダイニングルームで接待をすることが増えてきた。事務所内での打合せと何ら変わらない環境であり、同僚も紹介しやすい。『飛び入り参加』も自由である。料理の内容はレストランに及ばないが、ワイン好きのパートナーたちが音頭をとり、ワインリストは充実させているという。もっとも、シェフを入れ替えたりして、料理のクオリティも上げようと努力をしているよう...

[連載小説]戦う法務課長 第16話「債権回収編⑦」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

推測の続き   英国スタイン社から、ミシマ・ヨーロッパに対する債務の弁済について、支払猶予要請がなされたことにいかに対応するか。東京の営業部より依頼を受け、検討していた三島工商法務部課長の隼、担当の乾は、ミシマ・ヨーロッパの駐在員である谷から、スタイン社の主要取引銀行であるリード銀行が主導で、同社の再建が予定されているらしい、との情報を得る。 ミシマ・ヨーロッパのスタイン社に対する債権額は、売掛金が135万ユーロ、前渡金が20万ユーロで、総額155万ユーロ。そのうち、まもなく期日が到来...

[連載小説]戦う法務課長 第15話「債権回収編⑥」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

緊急連絡   隼は、なかなかつかまらなかった。乾は、そろそろ終電の時間が気になり始めた。もうしばらくしたら、オフィスを出ないと間に合わない。 その時、電話が鳴った。 「やあ、乾さん。遅くまでやってるね」 隼の落ち着いた声。乾は、ロンドンの谷から電話があったことを伝えた。 「どこで、どう調べたかわからんが、直接電話がかかってきたよ。会社として個人情報の管理はどうなっているのか、と疑いたくなるね」 「谷さんと、お話をされましたか?」 「スタイン社から、支払猶予の要請がきたらしい。詳しいこと...

[連載小説]戦う法務課長 第14話「債権回収編⑤」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

電話会議(Conference Call)  午後3時55分。指定された会議室へ隼と乾が入ってきた。会議室には、営業部の岸、若手の原、それから財務部の郷と経営企画の堺がいた。 何かある。郷や堺が同じ会議に顔を連ねることなど滅多にない。二人とも、部を代表するエース級の課長であり、多忙を極めている。隼も、この2人と同じ会議に出ることはほとんどない。 「いやあ、お忙しい皆さんにお集まり頂いて、申し訳ない」 岸が、会議電話用の機器を机の上にセットしながら、説明をはじめた。 「今日の午前11時、...

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