2013年11月

[連載小説]戦う法務課長 第31話「新人教育編⑬」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

反 芻   SDF社販売担当重役は、もう一度、自分が描いたシナリオを反芻していた。 タイの化学品メーカーからの出資を仰ぎ、ミシマの出資比率を下げる。当然、タイの化学品メーカーは、出資比率に応じて現在ミシマが金融機関に差し入れている保証に対して、裏保証を差し入れる。保証なので、実際にただちに現金を拠出するわけではない。そして、原料供給、輸出ともに、ミシマが独占していた分を新しい出資者に振り分けることで、なるべくSDF社のコントロールを深める。そのうち、ミシマは撤退を考えはじめる。 みずか...

[連載小説]戦う法務課長 第30話「新人教育編⑫」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

一 考ベトナムでのジョイント・ベンチャーのパートナーであるSDF社との交渉は、一筋縄ではいかない。ミシマとしては、即時撤退と言い放つことは、多額の損失を明るみに出すことになる。そのことは、現在、平行して進められているプロジェクトへの資金投入に大きく影響する。会社の判断としては、損失の穴も埋めないで、あらたな投資を実行するなど認めるわけがない。柴は、そう確信していた。かといって、SDF社のプロポーザルをすべて飲むことは、ミシマのアジアにおける化学品戦略上、大きな後退を強いられることになる。合弁会社...

[連載小説]戦う法務課長 第29話「新人教育編⑪」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

画 餅 もともと、製品の製造が当初の予定数量に達していないことが、合弁会社の利益不振の原因だ、と柴はみていた。投資決裁に関する書類をみたが、現物出資される機械設備が老朽化している点を懸念する意見はあるものの、追加設備投資金額の部分については、「当面、様子見」とい結論になっていた。すなわち、とりあえず、今ある設備でできるところまでやれ、という判断であったようだ。合弁会社の利益と製造の効率は最も直接的に関係してくるものであり、製造や原料調達に関わるコストをいくら減らそうとも、収益の源泉であ...

[連載小説]戦う法務課長 第28話「新人教育編⑩」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

反 響 堺が作成した国際取引に関する営業担当者向けのQ&Aを社内のイントラネットに公表したところ、多くの問い合わせがあった。社内の連絡先を堺の電話番号にしたからだ。あらかじめ想定される質問とその回答をイントラネットに掲載することで、業務の効率化を図ろうと思い、作成したのだが、かえって、その後の対応に多くの時間がとられるようになった。堺は、通常業務に加えて、イントラネットに掲載したQ&Aの更新に追われる毎日となった。実は、これこそが、隼の狙いであった。人は何か一つの作業に集中して...

[連載小説]戦う法務課長 第27話「新人教育編⑨」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

逡 巡   堺は、乾の指示で営業担当者向けのQ&Aの作成にとりかかった。とりあえず、先に出した16問分について、簡単な解説のたたき台を作ることを考えている。 今まで、電話やメールでそれなりに営業からの問い合わせに答えてきたつもりだが、いざ、社内のマニュアルとしてかたちに残るようなものを作るとなると、自分にはまだ荷が重いのではないか、と堺は思ってしまう。 乾によれば、隼にメールで報告したところ、堺がQ&Aをまとめた上で、社内の中堅社員法務研修で説明するように、という指示だったそうだ。 中...

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