コラム

[連載小説]戦う法務課長 第43話「コンプライアンス編(2)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

体 制   中堅総合商社ミシマの法務部副部長である隼太郎は、上司である管理担当役員の秦より、欧州からの内部告発メールに関する調査を命じられた。内部告発は、英文メールでミシマのコンプライアンス窓口宛に送られていた。 ミシマのコンプライアンス体制は、社長をコンプライアンス委員長とし、管理担当役員が事務局長となり、委員として財務、経営企画、人事、広報室、秘書室の責任者それぞれの担当役員が名を連ねている。コンプライアンス窓口とは、いわゆるホットラインの連絡先であり、通報者は電話、メールいずれで...

[連載小説]戦う法務課長 第42話「コンプライアンス編(1)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

インタビュー   中堅総合商社ミシマの法務部副部長である隼太郎は、法律雑誌の編集者のインタビューを受けていた。 この法律雑誌は毎月出版されているが、毎号見開き1ページを使って、さまざまな会社の法務部を紹介している。ミシマの広報室を通じて、隼のところに取材協力の依頼がきた。隼は、法律雑誌出版社に請われて、実務記事を書くことはあまり苦にはならなかったが、編集者からインタビューを受けるということには抵抗があった。文章であれば、推敲を重ね、内容を吟味できる。しかし、インタビューは、聞かれたこと...

[連載小説]戦う法務課長 第41話「新人教育編(23)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

ワイン   中堅総合商社のミシマの法務部は、生き残りをかけた資産売却プロジェクト「キロ」を、法務、財務および田の所属するクライド&ケインの弁護士たちの協力を得て、完遂させた。 取引の相手方であるドイツの投資銀行クラインゲルドは、多額の手数料を手にした結果、担当のカールは今までにないボーナスを手にした。カールの上司クラウスは、そのボーナスに加え、巨額の退職金をもらってリタイアしてしまった。カールは、ドイツに帰国した際に、クラウスの住むライン川の支流が流れこむ南ドイツの小さな街を訪ねた。ク...

[連載小説]戦う法務課長 第40話「新人教育編(22)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

力仕事   中堅総合商社ミシマが極秘に進めていた融資債権の売却プロジェクト(プロジェクト名「キロ」)は、大詰めを迎えている。 購入先のドイツ系投資銀行であるクラインゲルドは、隼、峰を中心とするプロジェクトメンバーとの交渉を通じて、債権が売却される都度、売却代金を支払うことで、一応の合意を見た。 しかし、それだけで交渉が終わったわけではない。法務とファイナンスの混合であるプロジェクトメンバーには山ほどの仕事が控えていた。ミシマのプロジェクトチームの主な仕事は事実確認と売却代金入金までのス...

[連載小説]戦う法務課長 第39話「新人教育編(21)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

様変わり隼は、田からのレターを受け取った。ハーバート&モリスのレターヘッドではなく、田の新たな事務所であるクライド&ケインのものであった。田の事務所は、ハーバート&モリスから分離し、クライド&ケインの日本事務所となったのだ。同事務所は英国に本拠地があるが、これまで日本に拠点がなかった。一方、ハーバート&モリスが吸収合併した事務所にも東京に拠点があり、いずれどちらかに統合されることになった。田の事務所は、吸収先の東京事務所に統合されることになったのだ。田としては、別に事務所の主導権を握ることに執着...

[連載小説]戦う法務課長 第38話「新人教育編(20)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

命 運   今、「キロ」といえば、中堅総合商社ミシマのなかで命運をかけたプロジェクトであるという理解は、その内容がミシマが保有する優良・不良の投融資債権を売却し、バランスシートの改善とキャッシュフローの向上を狙ったものであるということ以外、詳細はまったく明らかにされていない。人の口に戸は立てられぬというが、今回のミシマ社内における情報管理は、かなり徹底されており、少なくとも、現在までは、その狙い通りとなっている。つまり、詳細は開示することなく、社内に緊張感をもたらすことに成功していた。...

[連載小説]戦う法務課長 第37話「新人教育編(19)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

キ ロ   中堅総合商社のミシマは、財務状況を改善、および自前でビジネスのための資金を創出すべく、保有する融資債権や投資先の株式を売却することを決定し、極秘プロジェクトとして「キロ(岐路)」と名づけ、隼以下法務メンバーと峰が率いる財務のプロジェクト部隊が担当することになった。 最近、社内では、法務や財務担当者への連絡がつきにくくなっているという苦情が聞かれはしたが、経営陣はまったく意に介さなかった。ミシマが生き残るためには、「キロ」の達成が最優先課題である。しかも、限られた時間で、最大...

[連載小説]戦う法務課長 第36話「新人教育編(18)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

秒読み 中堅総合商社のミシマは、財務状況を改善し、自前でビジネスのための資金を創出すべく、保有する融資債権や投資先の株式を売却することを決定した。融資債権のなかには、優良なものもあるが、いわゆる回収が滞り、社内的には「塩漬け案件」と言われている不良債権も含まれている。ミシマとしては、投資家に対する説明上、こうした不良債権を順次整理していくことを示していかねばならない環境にあった。いわゆる「臭いものには蓋」をできる時代ではなくなったのだ。ミシマの経営陣は、財務体質の改善・強化と投資家への...

[連載小説]戦う法務課長 第35話「新人教育編(17)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

報 告   中堅総合商社ミシマは、財務状況を改善し、また銀行からの融資にはなるべく頼らず、自前でビジネスのための資金を創出すべく、保有する融資債権や投資先の株式を売却する社内決定を行った。ただし、決定内容は、創出する目標金額を定めるとともに、売却に伴うロス(損失)の大まかな金額を見込んでいた。 融資債権の売却にあたっては、額面金額より低くなることは避けられない。財務部資金課の課長で、今回の資産売却のリーダーである峰は、今朝も財務担当役員の部屋に呼ばれた。進捗状況を報告するためである。 ...

[連載小説]戦う法務課長 第34話「新人教育編(16)」
北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役

ある早朝   中堅総合商社ミシマ法務部の新入社員の湊は、最近、早朝出社をすることにした。書店で見かけた早起き関連の書籍をいくつか立ち読みするうちに、早朝の時間をうまく使うと仕事の効率が上がるのではないか、という気がしたからだ。湊の住むアパートから会社までは、電車で約45分。車中も座って本が読めるようにと、始発に近い電車を選ぶようになった。昔読んだ企業法務をテーマにした小説のなかで、登場人物が早朝から竹刀の素振りを行った後、我妻榮の「民法講義」を読む、というシーンがあった。そこまで、スト...

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