[連載小説]戦う法務課長 第3話「契約交渉①」

2013年5月16日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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機 内

 

 モスクワ空港から国内線に乗り継いでY共和国に向かう。モスクワより極東方向へ戻る約6時間のフライトである。今回の出張準備のおかげで、締切りに間にあわない仕事を何とか出張期間中に処理し、現地よりメールで回答するということで猶予してもらった案件が5件、実務家向け法律雑誌に寄稿する原稿2本を隼は抱えていた。モスクワまでの国際線はともかく、国内線は全体に薄汚れた感じで、しかも、壊れたシートもいくつかある。そんな中での唯一の幸福は、隼のシートが喫煙席であったことだ。早速、空港で買ったフランス製の煙草に火をつけながら、この6時間の割振りを考えた。少なくとも、案件3件、原稿1本は片付けたい。

 

対 面

 

 「先生、調子はどうだい。契約の交渉は後3時間後に始まるが」

 「シャワーでも浴びてさっぱりしたいところだが、そうもいかんでしょう。まずは、交渉相手の顔を見なくちゃ」

 今日の日程では、掘削機の購入者と主に価格、品質責任、保守・メンテナンスに関する条件、および親会社から取得する保証の内容についての交渉となっている。明日は、Y共和国政府関係者が交渉に参加することになっている。出張前の強硬なやりとりにより、5年間分割という支払条件を受けるかわりに、政府からの保証を取り付けることで大まかな合意が取得できたためである。

 隼と機械部門の課長は、通訳のセリゲエビチ・シドロフを連れてホテルの会議室へ向かった。Y共和国関係者も掘削機の購入者も、契約交渉となればロシア語でしかできないという。シドロフは、英語が堪能であり、日本語も日常会話程度なら全く問題なくこなせる。元KGB 出身といわれており、態度物腰は柔らかいが、眼光は鋭い。

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