[連載小説]戦う法務課長 第6話「契約交渉④」

2013年6月06日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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泰然自若

 

 「先生。あの政府からきた女性が弁護士だってなぜわかったんです?」

 「なにね。今、サポートしてもらっているモスクワの弁護士と大学で同級だったらしい。彼によれば、欧米の大手法律事務所からパートナーの誘いがくるほど優秀なようだ」

 通訳のシドロフは、隼の交渉における態度は、これまで彼が出会った日本人のどのタイプとも違うと感じていた。そもそも、in-house legal(社内の法務)の人間が、営業より前に立って交渉することなどこれまではなかった。

 「政府側は、まだ何か『隠し玉』を持っていますかね」

 「彼女にどれだけの権限と、説得力があるかによるね。先程の交渉内容では、もう彼女から何も出てこないと思うが」

 隼は、エレーナの背後にいるであろう顔も知らぬ財務省高官のことを思い浮かべた。可能な限り、共和国にとって有利なかたちで物事を収めることに腐心するエリートである。

 

質疑応答

 

 エレーナは、休憩の間、財務省高官に対して電話で交渉の様子を伝えた。

 「私は、君を弁護士として採用したつもりはない。財務省の意向を適確かつ効果的に相手に受け入れさせるための瞬時の分析力、交渉力、判断力を買ったのだよ」

 高官は、状況報告を必ずしもポジティブには受け止めていないようだ。エレーナは、そうした高官の態度にも構わず話を続けた。

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