[連載小説]戦う法務課長 第7話「企業買収編① 乾美和登場」

2013年6月13日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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バツイチ、乾美和登場

 

 「おはようございます。今日からお世話になる乾美和です。」

 隼は、昨晩から検討している契約書から顔をあげ、時計をみた。まだ、午前745分。

 ロシアとの売買契約書の詰めが迫っており、現地にいる営業課長から今朝の10時迄にコメントがほしいと言われた。もっとも、その依頼がきたのは、隼が大学の同期会に遅れて出席し、1次会がお開きになる寸前。おかげで、校歌斉唱という不愉快な「恒例行事」を免れ、夜中に会社に戻り、そのまま夜を明かしたのである。

 「ああ、隼です。部長から話を聞いています。何でも、外資系の会社の法務をやめて、ウチにきたとか」

 外資系のほうが給料ははるかにいいとだろうになぜ、という質問は飲み込んだ。

 隼は、中堅商社株式会社三島工商の法務課長である。まだ、この会社には独立した法務部はなく、法務、審査、投融資事業管理、総務関連のセクションの集まった「管理部」という組織である。法務は、隼のほかに若手が3 名いたが、1名は法科大学院に合格し法曹資格を目指すために退職し、2名は法務組織のある外資系企業に転職した。さすがに、部長および管理、財務、経理部門のトップである役員も、隼一人では法務業務をこなすことは無理と判断。かといって社内に人材はなく、やむなく外部から採用することにした。

 乾美和は、面接にきた他候補者より、そのキャリアの高さ、帰国子女ならではの高い語学能力(英語およびスペイン語)、爽やかな物腰、明るい性格で、面接した者の心をとらえたようだ。乾の採用には、隼は関与しておらず、ロシア出張の間に全てが決まっていた。ただ、部長からは、興奮した調子でメールが入っており、そういえば「才色兼備」だの「才気煥発」だの「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」といった賛美の言葉がならんでいた。

 「昨晩はお帰りになっていないんですか?」

 隼は無言で頷いた。よくあることだ。最近では、たまに、早く帰ると、逆に叱られることもあるくらいだ。

 「残業は、私は大丈夫です。一人で暮らしていますし」

 乾は聞いてもいないことを一気に話した。

 「最初に申し上げておきますが、私、先月離婚したばかりなんです」

 隼はあらためて乾を見た。結婚しているようにはみえなかったが、バツイチだって!?

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