[連載小説]戦う法務課長 第11話「債権回収編②」

2013年7月11日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
コラム トラックバック (0)

初出張


入国手続を済ませ、用心深く鞄を持ちながら、乾はデュッセルドルフ空港の外に並ぶタクシーを拾った。ミシマ・ドイツのオフィスは、空港から約30分程度の町の中心街にある。アウトバーンをしばらく走り、一般道路に降りて、寂れた住宅街を通り抜けると、大きな公園の脇に出る。ここから、オフィスのあるケーニヒス・アレーまでは約5分。大きな百貨店やホテルも見えてきて、ようやく景色が中心街らしくなってきた。

乾は、バウ・ケミカルに対する債権回収の交渉のためにドイツ入りした。隼からは、現地の営業(といっても日本人駐在ではなくドイツ人スタッフ)と隼が紹介した弁護士と事前によく打ち合わせて進めるように、とだけ言われている。当の隼は、ほぼ同じタイミングでトルコ入りしている。

会社から貸与された携帯電話などで、連絡をとることはできるとはいえ、初の海外出張はさすがに不安だった。営業部の担当者は、他の客先への商談の関係で、乾より2日遅れてドイツ入りする。それまでに、ドイツ人スタッフと法律事務所で、債権回収交渉の進め方と今後の方策について協議するのが乾の役割である。また、交渉に同席するかは、相手側の反応次第ということで隼と営業部長の間でコンセンサス(合意)が得られている。

 乾は、ケーニヒス・アレーに立ち、深呼吸をした。ここには、きらびやかなブランドショップが建ちならび、人々はオープンカフェでゆっくりくつろいでいる。この通りを散策したら、どんなに気分がよいだろうと思ったが、そんな時間がとれる出張ではなさそうだ。乾はミシマ・ドイツのオフィスが入っているビルを探し始めた。


 


 


 




>>続きを読む

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL: http://businesslaw.jp/cgi-bin/mt2/mt-tb.cgi/145