[連載小説]戦う法務課長 第13話「債権回収編④」

2013年7月25日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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量と質

 

――出張から戻ると、通常のペースに戻るには出張の2倍の時間が必要――。

隼は、かつての上司が呟いていたことを、毎度のことながら実感している。

海外出張から戻った翌日にオフィスに出ると、机の上や椅子のあたりに、書類、メモ、郵便物が散乱している。それを処理して、通常の業務のペースに戻るのには時間がかかる。

今は、ノート型PCを携帯して、宿泊先のホテルからでも会社からのメールを読み込むことができる。出張期間中でも、相手はお構いなしに、メールを送ってくる。

便利になった、効率があがった、と言いながら、その一方で大量の業務を処理しなければならない。いわば、質より量の環境にありながら、世の中は「質」を求めてくる。法務マンにとっての「質」とは何か? 時々、思いを馳せることもあるが、考えがまとまったことはない。

「コンプライアンス」や「CSR(企業の社会的責任)」が声高に叫ばれているなかで、法務という組織や法務マンである自分がどう変わっていくべきなのか。「変わらない」ということも選択肢の1つである、との思いが振り切れず、思考は途中で停止する。企業法務の仕事とは、つきつめれば、コンプライアンスにもCSRにもつながる。「コンプライアンス・オフィサー」という役割のポジションが、商社である三島工商のなかにも新設されるようだ。法務部も無縁ではなく、そのポジションは、法務部内に置かれるとの噂もある。ともかく、隼は、机の上の書類の仕分けにとりかかった。

 

新規案件

 

ドイツから帰国した隼と乾は、出張の間に溜まっていた営業部からの依頼の処理に追われている。乾のところにも書類が溜まっている。契約書の検討依頼15件、契約締結に関する社内許可申請書が20件、その他電話メモ、会議の出席依頼多数。乾も、どうやら社内の環境や営業部の事情をだんだんと把握しつつある。積極的に会議をこなし、遅くまで頑張っている。隼が一服するために外に出ようとしたとき、電話が鳴った。

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