[連載小説]戦う法務課長 第14話「債権回収編⑤」

2013年8月01日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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電話会議(Conference Call
 

午後355分。指定された会議室へ隼と乾が入ってきた。会議室には、営業部の岸、若手の原、それから財務部の郷と経営企画の堺がいた。

何かある。郷や堺が同じ会議に顔を連ねることなど滅多にない。二人とも、部を代表するエース級の課長であり、多忙を極めている。隼も、この2人と同じ会議に出ることはほとんどない。

「いやあ、お忙しい皆さんにお集まり頂いて、申し訳ない」
 岸が、会議電話用の機器を机の上にセットしながら、説明をはじめた。

「今日の午前11時、あ、ロンドン時間ですがね。うちの駐在員がスタイン社の営業担当のディレクターとミーティングをすることになっています。その前に、電話会議で皆さんに、話の進め方やら何やらご指導頂きたい、と思いましてね」

「財務としてのコメントはすでに伝えてあるはずですが」
と郷は言い放った。堺も、それに頷く。

「まずは、営業部としての『絵』をきちんと描いて頂かないと、経営企画としてもコメントの出しようがない、と昨日申し上げたんですがね」

どうやら営業部は色々な職能部隊に説明をしたが、いずれも詰めるべきポイントが詰めきれていない、という指摘を受けたようだ。乾には、その状況でどうして営業部があえて、会議を招集したのか、いまだに理解できないでいる。

「現地の駐在員はどなたでしたかね」

隼が独り言のように尋ねた。

「谷君です。最初はイタリアの物資にいましたが、欧州の組織変更でロンドンに転勤になりました。ロンドンに行ってから3年は経つかな」

岸の説明は他人事のようだ。今の話からすれば、谷は通算で6、7年は駐在していることになる。三島工商では、駐在期間は通常5年。長いほうだ。

「隼さんだって忙しいだろうし、これから、一体何の話をするんですか」

「谷さんから、直接現地の状況を聞いていただき、いろいろとアドバイスをお願いしたいのです」

原が、やや遠慮がちに説明した。その様子に、乾は、営業部のなかできちんと意思疎通ができているのか、不安になった。

「とにかく、電話を繋いでもらいましょうか」

隼は、原を促した。隼の言葉で、郷も堺も仕方ない、というあきらめの表情をした。

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