[連載小説]戦う法務課長 第15話「債権回収編⑥」

2013年8月08日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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緊急連絡

 

隼は、なかなかつかまらなかった。乾は、そろそろ終電の時間が気になり始めた。もうしばらくしたら、オフィスを出ないと間に合わない。

その時、電話が鳴った。

「やあ、乾さん。遅くまでやってるね」

隼の落ち着いた声。乾は、ロンドンの谷から電話があったことを伝えた。

「どこで、どう調べたかわからんが、直接電話がかかってきたよ。会社として個人情報の管理はどうなっているのか、と疑いたくなるね」

「谷さんと、お話をされましたか?」

「スタイン社から、支払猶予の要請がきたらしい。詳しいことはメールで送る、と言っていたが、まだきていないようだね」

隼が、ノートパソコンを持ち歩いて仕事をしていることを乾は知っている。

「今、ご自宅ですか?」

隼は、低く笑った。どうやら、ファミリーレストランにいるようだ。隼が、自宅近くのファミリーレストランで仕事をすることがある、と噂には聞いていたが。

「いずれにしても、明日、打合せしよう」

やれやれ、終電には間に合いそうだ。乾は、電話を切るとオフィスを飛び出した。

 

電話会議再び

 

谷からの電子メールでの連絡は、翌朝になってもきていなかった。隼も乾も別件の処理やいくつかの短い会議に忙殺された。

その日の午後、営業部長の岸から連絡があった。

スタイン社から支払期日延長の要請があったようだ。隼は、その連絡を受けても、特に驚きもせず、当然のように受け止めていた。

岸の要請で、急遽、谷を含めて電話会議で打合せをすることになった。隼と乾が会議室に入ったときには、すでに岸と谷は電話で話を始めていた。

「谷君。いま、隼さんと乾さんが来た。これから、会議電話に切り替える」

岸が、電話会議用のスイッチを押す。スピーカーから疲れ切った谷の息遣いが聞こえてきそうだ。

「現在までの状況を簡単に話してもらおうか」

おそらくは、すでに岸は話を聞いているのであろうが、隼と乾のために、谷に説明を求めた。隼は、よくも悪くも、本件のキーパーソンは谷であると、みなしているようだ。これまでの隼の谷に対する口調や態度から、乾は、そう感じていた。

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