[連載小説]戦う法務課長 第16話「債権回収編⑦」

2013年8月15日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
コラム トラックバック (0)

推測の続き

 

英国スタイン社から、ミシマ・ヨーロッパに対する債務の弁済について、支払猶予要請がなされたことにいかに対応するか。東京の営業部より依頼を受け、検討していた三島工商法務部課長の隼、担当の乾は、ミシマ・ヨーロッパの駐在員である谷から、スタイン社の主要取引銀行であるリード銀行が主導で、同社の再建が予定されているらしい、との情報を得る。

ミシマ・ヨーロッパのスタイン社に対する債権額は、売掛金が135万ユーロ、前渡金が20万ユーロで、総額155万ユーロ。そのうち、まもなく期日が到来するのは、50万ユーロである。

スタイン社は、リード銀行を中心とする銀行団による再建支援の条件として、同社がもつ在庫商品、売掛金等の一切の資産を担保に提供することを求めている。銀行団は、スタイン社に対する債権を全額回収しながら再建させることを目論んでいるようだ。

乾は、即座にスタイン社に対する訴訟の準備をすることを伝えた隼の意図がわからずにいた。

「訴訟提起の準備のためには、法律事務所を起用する必要があると思いますが」

乾は、隼の真意を計るように尋ねた。

「本当に訴訟提起するかどうかはわからない。でも、準備をすることは必要だ。いつでも刀を抜ける状態にあることを示すためにね」

乾は、以前、債権回収に関して実務家が書いた本を読んだことがある。その中に、訴訟や倒産手続といった法律的・強制的な回収手法より、いかに相手に任意に支払わせるかがポイントである旨の解説があった。隼は、任意で支払わせる、というステップを飛び越えて、いきなり法律的・強制的な回収手段を取ろうというのだろうか?

 

見通し

 

リード銀行のシンシア・プリチャードは、昨晩作成したスタイン社の再建案を上司のマーク・ウィルソンに提出した。すぐに、マークから打ち合わせをしたい、との連絡があった。

>>続きを読む

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL: http://businesslaw.jp/cgi-bin/mt2/mt-tb.cgi/150