[連載小説]戦う法務課長 第18話「債権回収編⑨」

2013年8月30日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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佳 境

 

ミシマ・ヨーロッパの取引先であるスタイン社が、リード銀行の主導で再建計画を策定中である。スタイン社と三島工商本社は、同社の持つ台所用品または生活関連用品の輸入・販売を行う合弁事業を企図していたが、スタイン社が事実上、銀行管理下に入ったことで、交渉が中断している。

ミシマ・ヨーロッパは、スタイン社に対して売掛金があり、その回収が危ぶまれている中で、売掛金の一部カット、残額の繰延弁済、あるいはスタイン社の株式との交換(デッド・エクイティ・スワップ)の返済計画を持ち出してきた。これは、債権者団である他銀行と同条件であり、ミシマ・ヨーロッパは、銀行団とともに、債権者間でのスタイン社による再建計画に関する契約(Inter-Creditor Agreement)の締結を強く求められている。

隼達は、英国の法律事務所とも相談しつつ、いかに交渉を進めていくか検討を重ね、ようやくスタイン社再建の鍵を握るリード銀行との交渉を迎えた。

 

前 夜

 

リード銀行との交渉前夜。

隼は、東京の部長に電話を入れた。電話は、スピーカーフォンにしてあるので、横にいる乾にも東京の部長とのやりとりが聞こえる。

「いろいろと頑張っているようだね」

部長は、営業部からの報告で、ロンドンにおける隼の状況をほぼ把握している。東京時間で午後11時。部長は、自宅で隼の電話を受けている。

「で、状況はどうなった?」

「リード銀行は、ミシマ・ヨーロッパを債権者団から外したい、あるいは、完全に他の銀行団と同列の条件で拘束しようとしています」

一呼吸おいて、隼は、続けた。

「これは、ミシマによる個別的な債権回収行為を防ぐことが目的と考えられます」

隼は、リード銀行が提示した条件が、ミシマとしては受諾に値しない低いレベルのものであること、リード銀行はミシマを銀行団の一部に取り込むことで、個別の債権回収行為を禁じ、スタイン社の処分を自由に行えること、そのために、銀行団で締結されるインター・クレディター・アグリーメントにミシマもサインするように求められている、という状況を要領よく説明した。

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