[連載小説]戦う法務課長 第22話「新人教育編④」

2013年9月26日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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環 境

 

隼太郎は、中堅総合商社ミシマの法務部部長補佐である。極度の喫煙癖とややアルコール依存の体質であり、オフィスを抜け出しては近所の喫茶店で書類をみたり、打合せをすることが多い。会社として、就業規則上問題がないとはいえないが、隼が、雇用契約上従業員に求められる「職務専念義務」を果たしていることについては、人事を含め、関係部署の人間達は認めざるをえない。

隼自身、自分の欠点は十分にわかっているが、身についたリズムというか,習性を変えることは難しい。結局は、「自分らしさを活かしながら頑張る」と勝手に思い込むようにしている。

部下の乾美和は、この2年間近く隼の下で働き、ようやく隼の底の深さがわかってきた。外資系企業の法務スタッフからの転職、たった1人での海外出張など、乾には目まぐるしい勢いで時間が過ぎたように感じられる。転職は離婚がきっかけであったが、いまや自分が結婚していたことすら忘れそうな日々を過ごしている。とにかく忙しい。

そんなミシマの法務部に新入社員が配属されることになった。会社は、法務スタッフの増強は認めるものの、管理本部長の強い意向で、即戦力となる中途社員ではなく、新入社員でヘッドカウントを埋めることになった。隼は、新入社員研修で、際立った個性を放った堺健介と湊蓉子に注目し、思惑通り2人は法務部への配属が決定した。

 

指導員

 

乾は、内心、弱り果てていた。隼から新入社員2人の教育係を命じられたのである。ミシマでは、新入社員には先輩社員が「指導員」として、仕事のイロハ、社内関係、顧客対応等について、実際の業務を通じて徹底的にたたき込む。

指導員によっては、各種宴会の幹事として部内の人間を満足させてはじめて一人前だと思い込んでいる者もいるが、とにかく、これからの1年間は新入社員にとっては正念場である。相性の良い指導員がつけばよいが、そうでない場合、さんざんな1年を送ることになる。人によっては、この1年間を「洗脳期間」と呼ぶ。指導員や上司の指示に従うことが第一、とされるからである。

乾は、そうしたミシマの社風をいろいろなところで感じるし、信じられないような逸話を宴会の席で聞いたりもしたが、自分はそのような育てられ方をしていない。人を指導するということが、まったくイメージできないのである。

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