[連載小説]戦う法務課長 第25話「新人教育編⑦」

2013年10月18日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
コラム トラックバック (0)

入 社

 

今、自分がまがりなりにも法務部の部長補佐(実質的には課長であったが)としてこなしている毎日の仕事を振り返ると、不思議な気分になる。本当にこれが「やりたいこと」だったのか…。

隼が、中堅総合商社ミシマ(当時は、三島工商といっていたが)に入社したのは、1984年。当時は、バブルに向かう過渡期であり、総合商社は花形的な存在であった。隼は、別に商社を希望していたわけではない。が、大学近所の喫茶店に貼られた「就職説明会」の案内を見て、交通費と食費が出るならと、物見遊山で出かけたのである。

説明会は、即、内定者を決める面接会場となり、隼はなんだかわからないうちに、1週間後には人事担当者から、内定の連絡をもらった。大学では法科を専攻していた関係で、多少はつぶしが効くのかくらいにしか思っていなかった。

入社当初は、法務関係の部署に配属されるなどまったく考えてもいなかった。他の新入社員と同じく、隼は営業志望であり、いずれは海外を飛びまわる仕事をしてみたい、と希望していた。なにより、会社の法務的な業務というのは、すべて「顧問弁護士」というのが取り仕切っていると勝手に思い込んでいたのである。

しかし、同期で入社した仲間を見ていると、そのパワフルさに圧倒され、とても自分には勤まらないと、入社早々の新入社員歓迎式で悟った。次から次へとくり出される「芸」の数々。先輩社員から滝のようにつがれるビールを飲み干しながら、正直いって隼は入社を後悔した。その一方で、ほぼ毎日ネオン街にくり出し、同期の社員や先輩、上司達と、時には夜を徹して飲み明かす、という風通しのよさに惹かれていた。

隼は、酒を呑んでもあまり酔っているようには見えなかった。そのせいで、いつしか「酒豪」の浮名がたち、方々の部署の「酒豪」といわれる管理職や先輩社員から誘いを受けた。ただ、酒を飲んでくだらない話をしているだけだが、これが後に、貴重な社内人脈の礎となったのである。

>>続きを読む

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL: http://businesslaw.jp/cgi-bin/mt2/mt-tb.cgi/159