[連載小説]戦う法務課長 第37話「新人教育編(19)」

2014年3月19日|北島敬之 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社/代表取締役
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キ ロ

 

中堅総合商社のミシマは、財務状況を改善、および自前でビジネスのための資金を創出すべく、保有する融資債権や投資先の株式を売却することを決定し、極秘プロジェクトとして「キロ(岐路)」と名づけ、隼以下法務メンバーと峰が率いる財務のプロジェクト部隊が担当することになった。

最近、社内では、法務や財務担当者への連絡がつきにくくなっているという苦情が聞かれはしたが、経営陣はまったく意に介さなかった。ミシマが生き残るためには、「キロ」の達成が最優先課題である。しかも、限られた時間で、最大限の効果をあげるためには、烏合の衆が何人いても駄目だ。能力のある、少数の精鋭部隊で、極秘にことを運ばなければならない。

経営陣が取締役会で決定した売却対象の融資債権金額は、USドルベースで25千万ドル。そのなかには優良債権もあり、返済完了までにはかなりの金融収益をあげる予定のものもある。

売却する、ということは、約束手形を銀行で割り引いてもらうように、期間が短くなるために、金利収益は減る。しかしながら、数年間にわたってスケジュールにしたがい、金融収益をあげるよりは、今、現時点でキャッシュ(現金)を手に入れることが優先と判断している。また、いわゆる「塩漬け債権」といわれていた回収が長年遅延している債権についても、損失を出してでも処分し、身軽になろうとしている。経営陣としては、たとえ株主総会で経営責任を問われる可能性があっても、結局、不良要素の排除、遊休資産の現金化を図ることで経営の透明化、健全化を図ることを目指しているようにみえる。

しかし、実際には、資金が逼迫している。普段、会社のなかで業務を行っている限りでは、その逼迫度合いはなかなか実感できない。しかし、一昨年あたりから、投資や融資案件が、投融資を決定する「プロジェクト審議会」で決裁されにくくなっていることや、営業資産や投融資案件の現状についての報告を、様々なフォーマットで繰り返し要求されるようになってから、なんとなくおかしいのではないか、という雰囲気が社内に広がってきた。

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