[Focus]日本版フェアユース規定の導入でビジネスは変わるか?(3)

2009年6月12日|伊藤 真 弁護士・弁理士
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20090601-2.jpg一般規定の濫用が権利者の泣き寝入りを生む恐れも


―― 「日本版フェアユース規定」の導入に賛成でしょうか。
 導入した場合の弊害について十分な議論がなされていないので、慎重論です。たしかに、フェアユース規定があれば、「雪月花事件」のように、不合理な結論を回避するための無理な条文解釈が不要になるという利点があります。しかし、フェアユースの基準が曖昧で拡大解釈されてしまえば回復不可能な被害が権利者に生じることも予想されます。
 導入した場合に発生する問題点を十分に検討するとともに、制限規定等の法改正による対応とどちらが望ましいかを冷静に比較検討する必要があると思います。

―― どのような事態が懸念されますか。
 フェアかどうかを事後的に裁判所で判断してもらった結果、アンフェアだという結論になった場合、どうなるのでしょうか。 今、ネット関連のベンチャー企業での活用を想定したフェアユース論議が盛んですが、その場合、結果としてベンチャー企業は投資した資金を回収できないでしょうし、権利者は実際には損害賠償などの侵害回復が極めて困難だろうと考えられます。
 そもそも、多くの著作権者は個人や小さなプロダクション等の会社です。自分の権利が「フェアユース」の名の下に侵害された場合に、多額の裁判費用をかけたところで損害賠償は微々たるものかもしれないし、裁判でアンフェアであると結論が出ればその企業は事業モデルが成り立たなくなるわけですから経済的に破綻している可能性が高い。そのようなことを考えたときに、裁判による事後規制に委ねてよいのか、権利者は多くの場合には泣き寝入りという事態になりかねないのではないか、そういうこともきちんと考えなければならないと思います。
 現状、明らかに著作権侵害にあたるような二次利用のものでさえも、フェアユースにあたるのではないかという誤解が一部にあります。また、とてもフェアユースとは言えないようなことまで、取りあえずフェアユースと言い張っておこうと考える人々の存在も懸念されます。これまでは侵害を認めてもらって話し合いで解決できた事案でも、裁判をしなければ解決できなくなることが増えるでしょう。警察に告訴しても警察が対応することが難しくなることも懸念されます。

―― 立法による解決のほうが望ましいということでしょうか。
 これまでのように必要に応じて個別の権利制限規定をつくる方法でも、フェアユース規定を設けて事後的に裁判所が判断する方法も、どちらも間違いではないと思います。
 著作権法の改正は毎年のように行われています。権利者・利用者の双方の意見をきちんと聞いたうえで改正を行うのと、最高裁や知財高裁での判断が確定していくのと、どちらが早くかつ明確なのでしょうか。そもそも、コンプライアンスを重視する企業は、立法や明確な司法判断がなされなければ、事業参入しないでしょう。そのことを考えたときに、フェアユース規定を設けて事後規制を行っていくのと、速やかな立法解決を重視していくことと、どちらが適切かを考える必要があると思います。

―― 司法による事後的判断であれば、とりあえずビジネスを始められるメリットがあります。
 そのかわり、権利侵害を惹起してしまうリスクも相当ありますよね。ベンチャー企業だから他人の権利を侵害することがあってもしょうがないというのであれば乱暴な意見だと思います。そして、この点は先ほどのフェアユースを標榜したフリーユースという弊害的な事案がどれほど強く懸念されるかということとも関連します。

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