反社チェック [3人の専門家が答える 反社対応の実務]


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[回答者]
大井哲也 弁護士(TMI総合法律事務所)
黒川浩一(元 警察庁刑事局組織犯罪対策部企画分析課)
芳賀恒人(株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究室)

反社会的勢力の定義

Q1何をもって反社会的勢力といえるのでしょうか。
明確な基準はありますか。


芳賀
 反社会的勢力とはそもそも曖昧なものであり、最終的には、「関係を持ってよい相手か」という判断基準によって自らが定義していくものである。とはいえ、自社の判断が社会の目から見て適切なものかどうか十分注意し、実務上は法令遵守レベルを超えて広くとらえておく必要がある。
大井 一つのモデルとしては、警察庁「組織犯罪対策要綱」に列挙されている暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等があり、それぞれの定義も記載されているので基準として利用できる。

BtoC取引における属性確認

Q2BtoC取引においては属性確認義務をどう位置付けたらよいでしょうか。身なりや言動(会話の中で暴力団組員であることを示唆されたなど)から、顧客が暴力団員等である可能性を認知したとしても、法人相手の場合と違って、それ以上のあからさまな確認は困難です。


芳賀
 実務的には、接客などにおいて反社属性をうかがわせるような端緒情報の収集に努め、問題があった場合は個別に対応するという方法もあり得る。そもそも属性確認には限界があることを踏まえ、自社ウェブサイトや説明資料等での企業姿勢の表明、自己申告(誓約)や規約等を活用した排除など、可能な限りの関係解消策をあらかじめ講じておくことがより重要となる。
黒川 個人に申込書等を記入させる場合、反社会的勢力でないことを表明確約させることが望ましい。なお、個人に日用品を販売することなどは、暴力団の活動を助長するとは考えづらく、通常は条例違反にならないと考えられる。

反社チェックの範囲

Q3業務上の備品購入など、契約書を締結しないスポットの取引について、どの範囲まで反社チェックをする必要がありますか。


大井
 条例対応の視点からは、企業が締結するあらゆる契約先、契約類型についてチェックが必要というわけではない。まずは、「暴力団の活動を助長する取引か否か」という視点でフィルターをかけて、排除対象の契約類型を選別し、さらにその中で優先順位を設定することが実務的な対応となる。もし、暴力団関係企業(フロント企業)からの備品購入であれば、それが暴力団の資金源になる以上、スポット取引であっても、助長性は認められ得る。もっとも、継続しない1回だけの取引や、取引額が僅少の取引の場合には、優先順位はおのずと低くなるだろう。
黒川 例えば、取引相手が暴力団に資金を提供する暴力団関係者である可能性が排除できないなら、条例上の属性確認の努力義務は生じ得るが、一般論としても「○○ではないこと」を証明するのは至難の業であり、最後は常識の問題である。高額取引や素性が特によく分からない相手との取引から優先的に確認するといった姿勢が大切ではないか。

反社会的勢力に当たるか否かの確認方法

Q4取引先が反社会的勢力かどうか、警察に照会に行ったら「個人情報なので教えられない」と言われてしまいました。それならどうやって判断すればいいのでしょうか。


黒川
 いつ頃の対応かは不明だが、いまどき情報提供を拒否する理由になっておらず、事実ならば、警察の対応が不十分だといわざるを得ない。ある取引が暴力団の活動を助長するおそれがあり、自社でも可能な範囲で属性確認等をしたうえで警察に確認を求めるならば、基本的には警察は情報提供すべきである。
大井 まずは、自助努力による調査の結果を説明すること、そして、警察から反社属性情報を得ることで取引拒絶または契約解除など反社との関係遮断の実行が可能となることを十分に説明することが重要である。それでもなお情報開示がなされない場合には、専門の弁護士に相談し、警察に対する属性照会手続自体を依頼することも一つの方法である。

Q51日数十件から数百件の取引について日経テレコン等でチェックするのは負担が大きいため、キーワードを不可欠なものだけ教えてください。


芳賀
 大前提として「大変だからチェックしない、できない、できるだけ簡素化しておこう」といった思考停止が反社会的勢力の侵入を許してしまうことに注意が必要である。社内の業務分担、組織的な端緒情報の収集のあり方を見直し、精度を高める努力を怠ってはいけない。ネット検索では、会社名や役員等の個人名を「暴力団」「反社」「疑い」といった主要キーワードと組み合わせるほか、企業姿勢によっては「詐欺」「違反」「容疑」などの追加も考えられよう。

Q6銀行や証券会社と違って、一般の事業会社が自社データベースを構築するのは困難ですが、必要なのでしょうか。


大井
 事業、業態によると考える。一般の事業会社であれば、自社のデータベースは必ずしも必要ではない。外部の暴追センターや専門の調査会社のデータベースなどを利用することが有用であり、コストとの見合いからも合理的である。
もっとも、事業会社であっても、大量の継続的取引が発生するような業態で、かつ、取引の可否について即時の判断が求められる契約類型であれば、むしろ、自社のデータベースを持たなければ業務が停滞する可能性が高いと思われ、実務上、自社のデータベースが必須となる場合も存する。

証券取引所や金融機関の反社チェック

Q7上場企業とその関連会社については、証券取引所のルールに従っていることを根拠として、チェック不要と考えるのは少々乱暴でしょうか。
また、自己名義の銀行口座を保有していれば、銀行のチェックを通っていることから、ある程度安心できると認識していますが、これは合理的でしょうか。


芳賀
 残念ながら上場企業なら安心ということはない。証券取引所にとっても、反社会的勢力との関係を理由とする上場廃止措置はハードルが高く、不適当な合併や実質的存続性の喪失など市場からの撤退を促すようなルールの新設・厳格化で対応しようとしているのが現実である。
また、銀行口座や証券口座の契約解除実務が進んでいるとはいえ、完全な排除は難しいのが現実である。したがって、それらは参考情報にすぎないと考えるべきである。レピュテーション・リスクも考えれば、あくまで事業者が自律的に取り組み、証券取引所や金融機関の措置に先んじて自ら対応していくことが重要となる。

海外取引先のチェック

Q8海外取引先(個人、法人)の属性照会について、有効な方法があれば教えてください。


芳賀
 マネー・ローンダリングやテロ資金供与など、国連や各国政府による金融制裁の対象となる重大な犯罪への関与や、詐欺や逮捕といったネガティブな言葉と結び付く情報が存在しないかを確認することが求められる。その方法としては、データベースやニュース等を検索し、社員から疑わしい取引の報告を収集するなどが考えられ、本質的には国内の反社チェックと変わらない。

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