暴排条項の導入 [3人の専門家が答える 反社対応の実務]


暴力団排除条例ガイドブックTOP > 暴排条項の導入

[回答者]
大井哲也 弁護士(TMI総合法律事務所)
黒川浩一(元 警察庁刑事局組織犯罪対策部企画分析課)
芳賀恒人(株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究室)

すべての取引先に暴排条項を導入する必要があるか

Q1新規契約書には、すべて暴排条項を入れるべきでしょうか。インターネット取引約款の場合はどうでしょうか。既に取引基本契約を締結済みの取引先との間で、暴排条項を導入した契約を改めて結び直すことは非常に労力がかかります。具体的な取引内容・相手方によるとは思いますが、必要性をどの程度の厳格さで考えるべきでしょうか。


大井
 条例上、暴排条項を契約書に入れることはたしかに努力義務ではあるが、その趣旨は、事業者が暴力団等に利益供与をすることを事後的に(契約締結後に)回避することにその本質がある。したがって、実務的には、暴力団の活動を助長する可能性のある取引契約については、すべて暴排条項を入れるべきだろう。インターネットの取引約款についても同様である。
既存の取引についても、取引先の同意を取得したうえで、暴排条項を導入した契約を改めて締結し直すのが原則である。しかし事務的に過大な負担となるのであれば、当該取引先と締結しているすべての契約をカバーする形式で、誓約書の違反によって契約の即時解除が可能となる内容の誓約書を差し入れてもらう手法もある。

暴排条項を嫌がる相手に対する条例上の努力義務

Q2国・地方公共団体、医療機関、銀行、外国人など、暴排条項の導入をかたくなに断る契約相手がいた場合に、どこまで努力すれば条例上の義務を果たしたことになりますか。


黒川
 嫌がる相手は時代遅れといえる。条例上、属性確認の努力義務は疑わしい場合にとどまっているが、「条例上、確認が義務付けられているので確認させていただきます」などと、条例を根拠に確認すべきであるし、その口実とするために条例は存在する。もちろん努力義務なので相手が嫌がれば仕方ないが、本当に嫌がる相手の属性は相当疑ったほうがよいだろう。

海外反社への対応

Q3海外反社に対応した暴排条項のモデル文例というものはあるのでしょうか。

大井 現時点ではいわゆる全銀協モデル条項のようなものはないが、一つの手法として、金融制裁リスト(OFAC SDNリスト、OFAC制裁対象国リスト、OFAC非SDN対象者リスト、国連統合リストなど)に該当しないことを契約相手に表明・保証させる条項が考えられる(具体的な条項例は『暴力団排除条例ガイドブック』第5章を参照)。

取引先の経営者の親族がグレーの場合

Q4取引先の経営者の親族がグレーの可能性があります。取引を即時中止すると事業に大きな影響を与えるおそれがあるため、様子見をしていますが問題ないでしょうか。


芳賀
 経営に重大な影響を及ぼす者が反社会的勢力であれば、当該企業とは速やかに関係を解消すべきである。ただし、政府指針解説(企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説(内閣官房副長官補付、平成19年6月19日))では、状況に応じて、①直ちに契約等を解消する、②契約等の解消に向けた措置を講じる、③関心を持って継続的に相手を監視する(=将来における契約等の解消に備える)という対応があり得るとされている。したがって、この親族が経営に重大な影響を及ぼしており、かつ反社会的勢力に該当するのであれば、速やかに関係を解消するということを企業姿勢として明確にすること、検討結果ならびに以後の対応記録を詳細に残しておくことが、万が一の際の説明責任など、関係解消実務には重要である。

表明保証(自社従業員)

Q5「従業員が暴力団と関係があることが判明したら契約解除」とされている暴排条項が散見されます。生まれによる差別にもなりかねないため、「関係がある」程度を明確にする必要があると思いますが、具体的にどのような記載にすべきでしょうか。


大井
 属性を「従業員」にまで範囲を拡大している点および一般的・抽象的に「関係がある」という括りをしている点で広範に過ぎるといえよう。例えば、属性の対象を「役員」に限定することや、「社会的に非難されるべき関係を有すること」などと一定の限定を付けることを検討したい。なお、暴力団との親族関係があるということだけでは「社会的に非難されるべき関係を有する」とはいえないと考えられる。
黒川 過去5年以内の元暴力団員を排除対象としている例も見られるが、真に更生した人なら、その社会復帰を促進するため、むしろ排除してほしくない。家族であれ元暴力団員であれ、暴力団組織との関係性がポイントとなる。

ページトップへ戻る