2012.05.23


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市区町村の暴力団排除条例と企業実務


市区町村条例への対応

平成23年10月にすべての都道府県で暴力団排除条例(暴排条例)が施行されたが、全国の市区町村でも暴排条例の制定が進んでいる。平成23年末時点で、福岡、愛媛等9県の全市町村をはじめ全国668市区町村で制定されており、全国の市区町村数の3分の1を超えている。
全国に顧客や取引相手がいるような企業においては、各市区町村条例の内容まではとても調査・把握できないという不安をお持ちの方もいるようである。拍子抜けしてしまうかもしれないが、結論は「市区町村条例の存在は、あまり気にする必要はない」ということになる。
市区町村条例の主な内容は、暴力団排除に関する理念的な規定のほか、市区町村の事務事業からの暴力団排除の推進や、市区町村における暴力団排除教育の推進が多い。都道府県条例にも同様の規定があるが、市区町村の事務事業には都道府県条例の効力は及ばないため、市区町村が独自に条例を制定しているのである。都道府県条例によって、都道府県の公金が公共事業を通じて暴力団に流れる事態を防止しているのに、市区町村の事業が暴力団の食い物になっては意味がないから、条例を梃子としたこうした取組みは当然といえよう。
一方、事業者から暴力団員等に対する利益供与の禁止や、暴力団を助長するおそれのある取引についての取引相手の確認義務等の規定については、都道府県条例による規制が既に存在しており、市区町村条例に同様の規定があるとしても、基本的には都道府県条例の範囲内と考えて差し支えない。
ただし、例えば愛媛県松山市の条例は、市内の繁華街を暴力団排除特別強化地域に指定し、強化地域内の接客業者から暴力団員への利益供与を罰則付きで禁止している。愛媛県条例の利益供与禁止規定に罰則はないから(勧告・公表)、市条例は県条例を上回る内容となっている。しかし、このような場合であっても、制裁の重さはともかく、県条例において、暴力団員等に対する一定の利益供与はそもそも禁止されているのだから、強化地域内の接客業者が「暴力団と関係を持たない、暴力団に利益供与しない」という基本的姿勢を守る限り、市条例の罰則規定におびえる必要はないということはご理解いただけよう。
また、公共事業を受注しようとする企業が暴力団と関係を有してはならないことは、条例の有無にかかわらず当然といえるから、その意味においても「気にする必要はない」のである。

都道府県条例ごとの規定の違い

各都道府県条例の規定にも細かな差異はあるが、これも過度に気にする必要はない。各条例の規制よりも、反社会的勢力と関わりを持つことに対する「世間の目」のほうがずっと厳しいのが現実である。重要なのは、暴力団排除や反社会的勢力との関係遮断という、もはやビジネスの常識ともいえる取組みを着実に実施していくことであり、いかに条例の規定を遵守するかという意味では、それで足りるのである。
これに関し、「全国の自治体で条例を制定するのなら、むしろ国が統一的な法律を作るべき」とのご意見を聞くことも多く、それはそのとおりだと思う。しかし、暴力団問題は全国的なものとはいえ、その深刻さに地域差があることも事実であり、それに応じて規制が変わることは、地方自治制度の本旨にかなうともいえる。例えばパチンコ店の規制が、風営法を基本としつつも、営業時間規制等の詳細については立地する都道府県の条例により微妙に異なっているように、ビジネスを全国展開する際に、各地の条例により実務が影響を受ける例は多数存在する。
暴力団排除には継続的な取組みが求められる。条例を読み込んでいく中でさまざまな疑問が生じることは、制定に携わった筆者として大変ありがたいことだと感じている。一つひとつの疑問を解決していくことで、取組みをさらに進めていただければ幸いである。

黒川浩一(元 警察庁刑事局組織犯罪対策部企画分析課)

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