2012.08.10


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暴力団対策法の改正(平成24年7月26日成立)


平成24年7月26日、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という)の一部改正案が可決・成立し、今秋にも施行される見込みである。

改正の背景

ここ数年、全国で暴排条例が整備され、社会全体における暴力団排除の動きが浸透しつつあるが、そうしたなか、全国最多の5つの指定暴力団が存在する福岡県内をはじめとして、暴力団との関係を絶とうとする事業者等への襲撃事件が相次いだほか、やはり福岡県内を中心に暴力団同士の対立抗争が終息しないといった情勢がある。こうした情勢を受けて、暴力団に対する規制を強化してその動きを封じ、暴力団を弱体化・壊滅させることを目的に、改正が行われた。

改正の概要

(1) 対立抗争や指定暴力団員による暴力行為を防止する新たな指定や命令制度の導入

改正前も、こうした行為を規制する仕組みはあったが、改正法ではそれらを強化し、一定の危険な行為を行った指定暴力団を「特定危険指定暴力団」等として指定し、警戒区域内における指定暴力団員の活動に厳しい制約を加えることとした。

(2) 都道府県暴追センターによる暴力団事務所の使用差止請求制度の導入

暴力団事務所の付近住民による訴訟は、これまでも警察や暴追センター等の支援により行われてきたが、暴追運動を活性化するため、改正法によって、住民は訴訟に関する権限を暴追センターに委託することができることになった。

(3) 暴力団員等による暴力的要求行為に関する規制の強化

都道府県公安委員会が発する中止命令の対象として、指定暴力団員が、金融機関に対して預貯金の受入れを要求すること、建設業者に対して建設工事の実施を要求すること、ホテル等に対して施設利用等を要求することを加えた。

(4) 行政機関や事業者の暴力団排除に関する責務に関する規定の整備

事業者については、暴追センターが実施している不当要求防止責任者講習を受講すること、事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させることがないようすることが、努力義務とされた。

企業実務に与える影響

暴力団対策法は、その正式名称が示すとおり、暴力団員の行為規制が主な内容であり、事業者は、基本的に不当要求を受ける被害者として位置づけられている。
暴力団員等から不当要求があった場合には、それが恐喝等の犯罪か、暴力団対策法に違反する態様の行為か、同法にも違反しないような狡猾なアプローチかにかかわらず、速やかに警察や暴追センターに相談・通報すべきであって、改正によってそうした姿勢が変わるものではない。
例えば前記(3)について、新たに中止命令の対象とされた行為が、既に暴力団対策法で禁止されている他の類型の不当要求行為や、恐喝等の刑法犯に該当する可能性があるので、企業実務を大きく変えるような内容の改正ではなかろう。
また、前記(4)についても、法令上努力義務とされたことには意義があるが、事業者が暴力団員に利益供与をすべきでないことは、暴排条例によって、あるいはそれ以前から、この規定にかかわらず社会的責務として当然といえるので、やはり影響は大きくない。

*  *

さて、企業における暴排条例の理解が十分ではないことにより、「何が暴排条例違反になるか分からない」といった声や、さらに「だから暴排条例の規定には問題が多い」といった声を聞くことがある。警察当局等が条例の正確な理解を促進するための広報啓発に努めるべきことは当然であるが、もしまだ「暴力団排除の必要性は理解するが、具体的に何をしたらよいか分からない」という段階であれば、「分からないから何もしない」のではなく、是非本書を活用するなどして、具体的な活動を実践していただきたい。
地道な努力をすること、そしてそれ以上に、企業がそうした姿勢を見せ続けることが、暴力団排除の近道である。

黒川浩一(元 警察庁刑事局組織犯罪対策部企画分析課)

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